梅雨の晴れ間に、母と連れ立って花しょうぶ園へでかけた。
  美しくも、満開だった。

  平日のその時、園内はシルバーな方たちでごった返していて
  思い思いの場所でお弁当を広げる姿。
  アンテナのように立つ趣味のための三脚たちに、マダムな方たちの日傘の波が押し寄せる。

  私なんて最年少の若輩者に見えてくる。
 
  「ここは天国ですなあ」
  「まったくですなあ」
  こんな会話の、のどかな時間。
 
  せっかくだから記念写真を撮ろう、とあたりを見回す。
  誰かにシャッターをおしてもらいましょう、と。
  どうせお願いするなら写真の心得のありそうな方に。
  木陰で一服する、かなり御高齢のおじいさまにお願いしてみる。
  その方、マニュアルのニコン、もっていたから。
  ちょっと期待大。
  立ち上がるときに、すこしよろめく姿を見て、少し申しわけなく思ったりもした。
 
  何度も何度もよろめきつつも、屈んだりもしつつも、
  私達ふたりとハナショウブの背景のバランスを考えくれているみたい。
  本人納得したころ、シャッターを押してくれた。
  なんだか、とても嬉しかった。
 
  ハナショウブを見にきたというのに、いつのまにか人間を見ていた。
  おかげで私は、撮影したハナショウブの花の名前をいくつか忘れてしまったのだった。

   人間ウォッチングの合間に、撮影した花しょうぶ達。
   見てくださって、どうもありがとう!
 
  2001年6月 澤田和美

撮影場所 <横須賀市立しょうぶ園>  
 
 
ハナショウブ豆知識